パクリマクリ

「4月8日の新入社員へ?永遠の夏休みという不安」より

早くも会社員生活に限界を感じている弱気のフレッシュマン、
あなたにだけ読んでもらえればいい
これはそんな文章である。

私が会社に就職したのは15年前のことだ。
働き始めた頃の思い出と言えば、「オフィスの強化ガラス越しの青空」しかない。
あんなに空は青く、晴れ上がっているのに・・・。

最初はいい人に思えた先輩が実は「社内評論家」と言われる無責任な輩だった。
適材適所の配置は行われず不向きなことをさせる、いいアイデアは
上にあげていくうちに潰されてしまう。
中途半端にやさしい人の存在が一番同僚を苦しめる。
自尊心の墓場が転がっている―――

こういったどこにでもある、
会社の嫌な面だけをあっという間に知らされる日々だったから、
無意識に青空の記憶だけしか自分に残さなかったのかもしれない。

5年間勤めた後、私は会社を辞めた。
辞めた理由は結局、ただひたすら本当の休日のようにゆっくり眠りたい、
それだけだったかもしれない。
金曜の夜、「土日は休めるな」と思っていても
手帳に月曜日の面倒な仕事の内容がぎっしり書き記されているのを見ると、
気になって夜はほとんど眠れない日々が続いていたからだ。

退職する当日、空は青く、どこまでも透き通っていた。
強化ガラス窓の向こうの青空が自分のものになるのだ、と思った。
退職手続きで、厚生課から「離職者の手引き」という冊子をもらった。
表紙には、雑に描かれたイラストの鳩が青空に飛び立っていく絵がかかれていた。
その空は安っぽい印刷でぼやけた、気が滅入るような不吉な空だった。

眠れない夜とはお別れだ、もう会社の些事を気に病む必要もない、
と考えていた私を待っていたのは、自由になった途端に訪れた一睡もできない夜だった。
自由は、ゆっくり眠れる気楽な夜ではなく、一睡もできない苦しい夜を連れてきた。

「夏休みが永遠にない生活」と「永遠に続く夏休みの生活」は、
どちらが根源的に人を不安にさせるのかと私は考えた。

写真家になった今でも、仕事がない平日には気持ちがざわめく。
みんなが休んでいる休日には少し気が休まる。
10年以上前、休日出勤で誰もいない会社の中にいる時、
なぜかとても穏やかな心持ちでいられたことを、
そんな時には思い出すこともある。

             写真家 丸田 祥三

これは、日本人にしかわからない感覚ではないだろうか。

そして、私は今日も勉強をするのである。

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